価格は理論値に限りなく近づくという考え方が、サヤ取りなどに応用されている。
たとえば、同じ時間帯でニューヨークの価格と東京の価格が異なる場合、安い方を買って高い方を売るディーリングは商社の得意とするところである。
しかし、この場合為替も動いているので、そうしたサヤ取りは瞬時の計算で反射的に行う必要がある。また為替の動向を読み違えると痛い目に会う。
この地域間でのサヤ取りは、世界の価格は一物一価であるという理論値を前提としている。
こうしたサヤ取りは東京で安く買ってニューヨークで高く売った場合、東京で買ったものをニューヨークに運ぶわけではない。そんなことをしたら運賃だけで割りに合わない。
安かった東京の価格はいずれ相対的に高くなり、高かったニューヨークの価格は相対的に下がるだろうという思惑である。いずれか一方が動くこともあり、結論的には同じ価格水準に近づくはずだという考え方である。
こうした異市場間のサヤ取りは例えば東京工業品取引所のゴム価格と中部大阪商品取引所のゴム価格や、ゴム指数、東京アルミと中部大阪のアルミ、東京穀物商品取引所のトウモロコシと関西商品取引所のトウモロコシ等の組み合わせがある。
こうしたサヤ取りは、例えば一般大豆とNONGMO大豆のような同じ大豆の遺伝子組み換えと非組み替えのプレミアムがいくらかというものもあれば、ガソリンと灯油という原料が同じものの価格差はいくらが適当かという考え方のサヤ取りもある。
これらは過去のプレミアムから推測して現在のプレミアムは高過ぎるとか安過ぎると考えるものである。しかし、プレミアムの理論値は確定していないので、たとえば一般大豆に比べ非遺伝子組み換え大豆のプレミアムは昔は3500円あたりが適当であったものが、今は1万円以上しているのはおかしいと思っても、すでに、遺伝子組み換えがごく一般的になってきた米国農家の間ではわざわざ日本だけのために生産効率の悪い遺伝子非組み換え大豆を生産するという労力に対するプレミアムは以前よりは格段に上がってきているはずであり、プレミアムの理論値は需要と供給の関係で常に揺れ動いており、そこにファンド等の仕手玉が入ってくると、一体いくらが妥当なのかという考えはそれこそ百家争鳴となる。
また、過去のサヤの変化をチャートで見る場合には、一代足のチャートを使わないと間違える。たとえば灯油とガソリンの価格差はつなぎ足のチャートでみるとまことに見事にサイン曲線を描いているが、これは騙しである。
一代足でそれぞれの限月の比差を見ると、それほどきれいに傾向値が出ているわけではない。
営業マンから、この見事なつなぎ足のチャートを使って説明されても、おいそれとは乗らないことが肝要である。それぞれの限月ごとガソリンと灯油の値差は異なった動きをしていることを研究されたい。
サヤ取りは簡単そうでいて意外と難しいものである。
また、その理論値を究めるには、多くのデータの収拾分析が欠かせない。
時間を労力をかければ誰でも探すことのできるサヤの動きは実は無いに等しい。
相場に勝つには自分だけで密かに調査研究して誰も知らない間に仕掛ける以外に必勝法は無い。
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近藤 雅世(こんどう まさよ)
